気になる口臭の原因、実はピロリ菌にあるかも?
多くの場合、口臭の原因は口内にあると考えられています。しかし虫歯治療や歯周病治療、歯石除去を行っても口臭が気になる場合は、胃(ピロリ菌)が原因かもしれません。
今回は口臭の原因が胃(ピロリ菌)である場合、どのような対処が必要なのかご紹介していきます。
胃(ピロリ菌)が原因の口臭について
人と近い距離で会話をした際に「この人の口臭が気になる……」と感じたことは、おそらく何度も経験していることでしょう。とはいえ、なかなか「口臭がします」と指摘するわけにはいきません。
そうした経験があるからこそ、自分自身も「人に不快な思いをさせたくない」「口が臭いと思われていたら恥ずかしい」などと歯磨きを念入りに行ったり、口臭対策としてマウスウォッシュを試してみたり、ミントタブレットを常時摂取するといった方も多く見受けられます。
しかし中には、口臭対策を行ってもまったく効果がでないという方がいるかもしれません。
虫歯や歯周病など口内に口臭の原因となる疾患がない場合は、胃(ピロリ菌)が原因となっている可能性が考えられます。
ピロリ菌とは?
胃には、ピロリ菌という細菌が潜んでいる場合があります。ピロリ菌は近年の研究でさまざまな病気を引き起こす原因菌として報告されており、たとえば十二指腸潰瘍や胃潰瘍、胃ガンなどの原因となるといわれています。
具体的には十二指腸潰瘍が90%、胃潰瘍は70%、胃ガンでは100%に近い割合で、ピロリ菌が原因によって罹患した可能性が高いと考えられているのです。
また、これらの疾患はピロリ菌を除菌することで予防できるとされています。そのため、ピロリ菌が発見された場合は、それを除菌することが一般的な治療として行われるでしょう。
胃は口から摂取した食べ物を消化するために、胃液を分泌します。その胃液の中に塩酸と呼ばれる強い酸が存在し、その塩酸は金属をも溶かしてしまいます。
胃の中は常に酸性に保たれているため、胃の中で細菌は生息できないと考えられていました。しかし、ピロリ菌が持つ「ウレアーゼ」と呼ばれる酵素がアンモニアを生産し、アンモニアにより胃酸が中和されることによって、胃の中でもピロリ菌が生息できるのです。
ピロリ菌感染と口臭
ピロリ菌は感染するものであることが解明されていますが、明確な感染経路は未だに判明していません。発展途上国では水からの感染が認められていますが、現在の日本においては水道の設備が整っているため、水道水などによる感染の可能性は低いとされています。
大人同士でのキスによる感染もないという報告もあり、大人になってからのピロリ菌感染の可能性は低いと考えられています。
しかし近年の研究報告によると、大人から子どもへの経口感染が感染経路だと考えられているようです。これは、子どもの胃の中の酸性度が低くいためにピロリ菌が停滞しやすく、感染しやすいとされています。
ピロリ菌の感染は、水道の設備が整っていなかった年代の50歳以上の人々に多く見受けられます。その感染率は80%にものぼり、およそ6,000万人の人々が感染しているとされています。
しかし水道の設備が整うにつれて、その感染率は著しく低下し、10代から20代における感染率は20%前後。今後も、ピロリ菌感染率は低下していくと予測されています。
では、なぜピロリ菌が口臭の原因となるのでしょうか。
先にもお伝えしたように、ピロリ菌は「ウレアーゼ」と呼ばれる酵素を持ち、その酵素がアンモニアを生産します。そのアンモニアの臭いが、口臭の原因となります。
ピロリ菌感染チェック
ピロリ菌の感染リスク度をセルフチェックしてみましょう。ピロリ菌は子どもの頃の経口感染であると考えられているため、中学生以上の方から確認することをオススメします。
1. 親や兄弟、家族などに胃ガンの人がいる
2. 塩辛いものをよく食べる
3. 喫煙している
4. 胃痛を感じることがある
上記のうち1つでもあてはまる場合は、ピロリ菌に感染しているために口臭が発生している可能性があります。なるべく早めに、医療機関でピロリ菌の有無を検査しましょう。
ちなみに、「塩辛いもの」というのは、つけものや塩辛などの塩蔵食品と呼ばれるものです。
日本には特有の塩蔵食品文化があり、私たちの生活に馴染みの深い食べ物ばかりですが、過度な摂取は控えてください。
ピロリ菌が原因の口臭対策
ピロリ菌に感染していると判明した場合は、医師の指示のもと、ピロリ菌の除菌をおこないましょう。
ピロリ菌の除菌方法に、大掛かりな治療は必要ありません。胃酸を抑える錠剤と抗菌薬を一定期間服用するだけで、ピロリ菌を除菌することできます。
ピロリ菌を除菌することで口臭の改善だけでなく、十二指腸潰瘍や胃潰瘍、胃ガンなどを防ぐことにもつながります。
ここでは、ピロリ菌が原因で口臭が発生してしまう理由や対処法などについてご紹介しました。口臭はとてもデリケートな問題であり、なかなか改善しない場合も多く見受けられます。
しかし原因を突き止めることで、改善できるケースは少なくないでしょう。しかし口臭の原因は、口の中の疾患やピロリ菌だけではありません。原因がわからない場合には、医療機関を受診することをオススメします。
口臭は誰にでも起こりうる生理現象の1つです。歯科医院や医療機関で検査を受けても口臭の原因がわからないからといって、過度に心配する必要はありませんので安心してください。