お口と美
2018.10.30

親知らずは抜くほうがいい? 抜かないほうがいい?

親知らず」とは、標準的に18歳~20歳頃にいちばん最後に生えてくる奥歯のことで、別名「智歯(ちし)」とも呼ばれています。
本来は、よく噛んで食べるときに役立つため生えている歯でしたが、現代では隣に生えている第二大臼歯に比べると歯根が短く、噛む力等も小さくなっています。
こうした理由からも、現代の軟らかい食生活に合わせるよう、親知らずの役割は終えつつあると考えられているのです。

親知らずが生えると、抜いてしまうという方は多くいます。しかし、本当に抜いてしまってよいのでしょうか。
この記事では親知らずを抜いてしまう前に、知っておくべき事柄を詳しくご紹介します。

親知らずが口内に及ぼす影響


親知らずは歯冠(歯の頭)がしっかりと生えていない、あるいは生えてくる方向や位置に異常がある場合に、細菌感染によって歯の周りに炎症を起こしやすい状態を作りだします。
特に起こりやすいとされているのが下の親知らず。症状が重度になってくると親知らず周囲の炎症だけではなく、歯肉膿瘍および歯槽膿瘍へと進行する場合もあります。これらは患部を中心に発赤し腫れ、痛みを起こすものです。

特に横向きに生えてきた親知らずは、隣に生えている第二大臼歯と呼ばれる奥歯を押してしまうことも。
押されたことで第二大臼歯の歯根が溶けてしまったり、その炎症のために骨が溶けてしまったりすることがあります。
磨きにくい生え方のために汚れが溜まりやすく、歯肉の炎症や虫歯の原因になることも考えられます。

親知らずは抜かなくてはいけない?


親知らずが生えたからといって、すべて抜かなければいけない、というわけではありません。
親知らずを抜く必要があるケースをご紹介しましょう。

まずは親知らずが虫歯によって残根状態になっている場合など、治療による修復が不可能と歯科医院で診断された際が抜歯の対象となります。
次に、歯周病が進行して骨が吸収されて歯が動揺しているなど、今後保存が期待できないと診断された場合も抜歯の対象です。

そのほかにも、矯正歯科治療を行う関係で抜くことも考えられるでしょう。そして、親知らずが全て歯肉に覆われている場合も抜くことがあります。
もちろん症状がない、あるいは他の歯に影響がないと診断された際には、様子をみたり、抜く必要がないといわれることも少なくありません。

親知らずがまっすぐに生え、上下がしっかりと噛み合っている場合は、無理に抜く必要はないでしょう。
抜かずに大切にケアして長く使うことで、将来役立つこともあります。どんなことに役立つのか、親知らずを抜く前に知っておきましょう。

まず、第二大臼歯と呼ばれる奥歯を失ってしまった場合、隣に生えている親知らずをブリッジの支台として使うことができます。
また、親知らずは失った歯の代わりに移植することも可能です。例えば第二大臼歯を失った場合に親知らずを抜いてきて、歯を失って空いたところに移植することで、再びご自身の奥歯で噛めるようになるというものです。
ご自身の親知らずが、抜くべき歯なのかそうでないのか。そして、将来的に使える歯であるのかは、かかりつけの歯科医院で聞いてみてください。

親知らずを抜く際に注意すべきこと


親知らずの抜歯は、場合によっては骨を削って行うこともあります。これは、いわゆる手術に近いものです。
こうしたことから、親知らずの場足は他の歯を抜く際と少し異なってくることがあります。もっとも分かりやすいのが、腫れたり出血する量が多かったりする点。その理由は、抜歯が必要な親知らずの多くが、骨の中に埋まってしまっていたり、隣の歯に引っかかっていたりするためです。

親知らずを抜くとき、腫れたり痛かったりしたという話を聞くことは多いもの。しかし、このような疑問を持たれる方もいるのではないでしょうか。

「自覚症状がないのに、なぜ痛い思いをして抜くの?」
「痛くなってから抜くのではいけないの?」

しかし、歯肉の下の見えない場所で知らないうちに虫歯ができていたり、隣の歯を支える周囲の骨がなくなってきたりしていることもあります。親知らずを抜いて汚れを取り除くことで炎症が抑えられ、隣の歯を守れるのです。

ただし、痛みがある(急性の炎症がある)ときに歯を抜くことはできません。
その理由は炎症を拡大させてしまう恐れがあるほか、麻酔が効きにくいといったことがあるため痛みが出る前に抜歯を勧める歯科医も少なくありません。こうした理由を知っていると、納得して歯を抜くことができるのではないでしょうか。

なお、抜歯を予約した後には、以下の点についても注意してください。

  • 抜歯の前日は深酒や過度の疲労は避け、十分な睡眠をとるようにしましょう。
  • 抜歯当日は口紅などを取り、体をしめつけないような服装を選びましょう。
  • 抜歯した当日に生ものの摂取は感染リスクがあるほか、アルコール摂取や長風呂、運動は血液循環がよくなるので避けましょう。


本来、しっかり食べ物を噛むという役割を担っていた親知らず。現代のニーズに合わせて、徐々に変化していることが分かりました。

親知らずが生えてきたからといって、全てを抜く必要はありません。現在どういった症状があるのか、親知らずが生えていることで周囲の歯や歯肉に影響があるのかなどを、まずはかかりつけ歯科医院に相談しましょう。

真っ直ぐに生えていて上下がしっかり噛み合っており、親知らずが本来の役割を担っていることもあるでしょう。また、将来的に移植したり、ブリッジの支台として使えたりすることも考えられます。
しかしお口の中の状態は、個人によって違うもの。まずは歯科医院に相談し、診断してもらってから抜くかどうか決めるといいでしょう。


<参考・参照元>
「親知らず」について|口腔外科相談室|日本口腔外科学会

監修者

歯科衛生士
田仲真菜美
田仲真菜美 氏の近影

たなか まなみ。歯科衛生士。平成27年4月歯科衛生士資格を取得し、歯科医院にて勤務。歯科領域のコラム執筆などにも従事。

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