お口と健康
2019.04.07

歯根嚢胞とは?歯が浮いた感じや横になると歯痛がする時は要注意

歯根嚢胞(しこんのうほう)という病名を聞いたことがあるでしょうか。
これは、虫歯の進行などで歯根の骨の中に膿(うみ)の袋ができてしまうもの。
虫歯の治療後にも生じる恐れがあります。


ここからはさらに詳しく歯根嚢胞の原因や治療について解説していきます。
歯が浮いた感じがする、横になると歯が痛むなど、気になる症状がある方はご自身と比較してみてください。

歯根嚢胞とはどんなもの?



虫歯は進行するとばい菌が骨の中にまで広がって、膿の袋を作りだします。この症状を「歯根嚢胞」といいます。
この袋は歯の根の先端から骨の中に広がって、あごの骨を溶かして作られます。

症状はおもに4つ。どんなもの?


歯が浮いた感じがする


歯の根の部分に膿が溜まって袋ができると、あごの骨などで膿の袋が圧迫されます。
すると、その歯の周りの組織が歯を押し上げようとするので、歯が浮いたような感覚になることがあります。

噛むと痛い


膿が溜まって膿の袋が大きくなってくると、さらに膿の袋が圧迫されます。その状態で噛むと、歯を支えている歯根膜などが圧迫されて痛みが出てしまうことも。
膿の袋が小さいと、噛んでも痛みがでないことがあります。

歯ぐきに膨らみができる


歯根嚢胞が進行して膿がどんどん溜まっていくと、骨などで膿の行き場がなくなります。やがて歯ぐきの外に出ようとして歯ぐきに膨らみができ、酷くなると膿が出てくることもあります。
歯ぐきの中で内圧が高くなると、痛みが出てくることがあります。ただし膿の出口になった場合は、一時的に痛みがなくなることもあります。

寝ているときに痛い


膿が急激に増えると、何もしていなくても寝ているときにドクドクとした痛みが出ることがあります。起きている状態では頭が上になっていますが、寝転がることによって膿の袋で圧迫される部分が変わり、痛みが出てしまうのです。
この場合は急性の症状なので、膿の通り道を作って内圧を下げる必要があります。早めに歯科医院を受診しましょう。

歯根嚢胞はどのように診断する?


歯ぐきの内部に生じるので、レントゲン写真を撮影して膿の状態を確認していきます。

膿の袋が大きく、あごの骨に中で大きく広がっている場合には、CT撮影で3次元的に確認すると、より精密な診断が可能です。まずは歯根嚢胞がある位置と膿の袋の大きさを確認し、どのような治療を進めていくか診断していきます。

なぜ膿が歯ぐきのなかに溜まってしまう?


歯の根の治療が不十分だった場合


虫歯が大きくなると痛みが生じるので、歯を削るだけではなく、神経の治療もしなければなりません。歯の神経の治療は、神経を専用の器具で除去し、その部分の管をキレイに除菌していきます。

この神経があった歯根の部分に詰め物をしていく際に殺菌や除菌が十分でないと、歯根の中にばい菌が残った状態になってしまいます。
このばい菌があごの骨に進んでしまい、ばい菌と白血球が戦った後の死骸として膿が溜まってしまうのです。

虫歯がかなり進行して歯根の先にまで細菌が及んでしまった場合


虫歯が大きく広がると神経にまで及んでしまうことも。この状態ではかなりの痛みを伴いますが、少しずつ神経が死んでしまうと、今度は痛みがなくなるほど虫歯が進行します。

痛みがなくなっても菌はそのままなので、歯の根まで虫歯菌が及んで膿の袋を作り、酷くなれば歯根嚢胞になってしまいます。

治療方法にはどんなものがある?


被せ物をはずして消毒・殺菌する再根管治療


再根管治療は、膿の袋が小さい場合には被せ物を外し、歯根の神経が入っていた部分から消毒・殺菌します。そのうえで、膿の袋の原因である膿を歯ぐきの外に排出していく治療です。

膿の状態によりますが、膿の袋が大きいと消毒の回数が増えてしまうでしょう。膿が歯ぐきの外に出たら消毒して、ばい菌が再度入り込まないように隙間がなく薬を詰め、その上に被せ物をしていきます。

ただし膿の袋の状態によっては、歯根の治療では難しいこともあります。

歯ぐきを切る歯根端切除


歯根端切除は、歯ぐきを切開して小さな穴を空け、膿の袋を取り出していく治療です。また、ばい菌が出る原因になっている歯根の先の部分を少し切除していきます。

歯根の治療をしても改善が見られず、抜歯やインプラントしかないといわれた場合でも、歯根端切除を行うことで歯を残す可能性が出ることがあるでしょう。
歯を抜くしかないと言われ、それでも歯を残したいという方は、一度セカンドオピニオンで歯医者に相談してみてください。

歯根嚢胞の予防には?


歯の根の治療をしっかりしてくれる歯科医院選び


歯根の治療が不十分だとばい菌が残ってしまい、根の先に膿が溜まる原因になります。
歯根の治療は虫歯が神経の近くに及ぶと誰でも必要となる可能性があり、歯根嚢胞は特別な病気ではありません。歯根の治療をしっかりと行ってくれる歯科医院を選びましょう。

早期に定期検診で発見する


歯根嚢胞は症状が出たタイミングで、膿の袋が大きいことも少なくありません。そのため、定期的に検診を受けてレントゲンを撮影しましょう。
早期に発見することで治療の期間も短く、費用も少なく済ませることができます。


<参考・参照元>
嚢胞(のうほう)|口腔外科相談室|日本口腔外科学会
嚢胞(のうほう) | 東京歯科大学千葉歯科医療センター

監修者

歯科衛生士
廣澤尚子
廣澤尚子 氏の近影

ひろさわ なおこ。歯科衛生士。平成14年4月歯科衛生士資格を取得し、美容外科の歯科部門や歯科医院で勤務。歯科衛生士としての経験と知識を生かし、歯科関連の執筆にも多く従事している。

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