お口と健康
2019.01.31

黒い歯石は歯周病と深い関係が......原因と対処法を解説


歯科医院で治療を受けている際に、「歯石」の除去をすすめられたことがあるという方も多いのではないでしょうか。
通常は白っぽい歯石には、黒くなるものもあります。
黒い歯石があると気になりますよね。どうして黒くなるのでしょうか。

ここからは、詳しく解説していきます。

歯石は2種類に分けることができます


歯石には2種類あることをご存知でしょうか。

1つは歯ぐき歯肉)より上にできる歯石(歯肉縁上歯石・しにくえんじょうしせき)、もうひとつは歯ぐきより下にできる歯石(歯肉縁下歯石・しにくえんかしせき)です。

どちらも、歯垢プラーク)が、唾液に含まれるカルシウムやリン酸によって硬く石灰化したもの。約80%が無機質であり、その大部分はリン酸カルシウムやハイドロキシアパタイトでできています。

この歯石の表面は粗く、歯垢が付着しやすくなっており、口内の歯垢を増やしてしまう原因になります。また、付着した歯石の除去は自身では難しく、歯科医院で処置してもらう必要があります。

また、歯石は唾液由来の成分で形成されているため、唾液腺の近くに形成されやすいのが特徴です。

歯ぐきより上にできる歯肉縁上歯石の歯周組織への直接的な影響は、歯垢ほど大きくありません。
しかし、歯垢が付着しやすい環境を作ってしまうことは事実。また、歯石自体が普段のブラッシングでは汚れが取りにくい部分にできてしまいます。
そのため、早期に除去せずに、放っておくと歯肉の下にも形成されていきます。それが、歯肉縁下歯石です。

歯肉縁上歯石の色は黄白色で、表面はプラークで覆われていることが多く、肉眼で確認することができます。
いっぽう、歯肉縁下歯石には黒くなるものもあるのです。

黒い歯石はできるのは歯周病の原因菌のせい


それでは、歯ぐきの下に付着する歯肉縁下歯石について、詳しくご説明しましょう。

歯肉縁上歯石が黄白色でしたが、歯ぐきよりも下に形成される歯肉縁下歯石の色は褐色から黒っぽい色をしたものが多くなっており、歯肉縁上歯石に比べて硬く、歯面に強く沈着しています。

歯肉縁下歯石が黒いのはなぜでしょうか。

この黒色は、歯周ポケットからの滲出液や血液によるもの。ヘモグロビンやその鉄代謝により黒色のコロニーを形成する歯周病の原因菌である「ジンジバリス」という菌が関係しているため色が濃くなるのです。

歯周病と黒い歯石は深い関係が......



歯周病の原因菌である「ポルフィネモナス・ジンジバリス」という菌が黒い歯石の原因となると、歯周病との関係が深いということになります。

歯周病とは歯周組織(歯の根を取り囲んで歯を支える組織である歯肉、歯槽骨、歯根膜、セメント質の総称)が病的な状態になったものであり、歯周組織としての機能が何らかの障害を受けている状態のことです。また、歯周病は、歯肉炎および歯周炎の総称でもあります。

このうち、黒い歯石と関係のある、歯周炎について説明します。

歯周炎は歯肉炎が進行し、歯槽骨や歯根膜、セメント質に炎症が波及した状態です。歯周炎にかかると歯ぐきが赤くなり、腫れが見られるようになります。そして歯垢や歯石の沈着を認め、歯周ポケットを形成するのです。

この歯周ポケットとは、歯肉溝と呼ばれる歯と歯肉の間にある1~2mmの深さの溝に歯垢が溜まることによって形成されるもの。歯周病にかかると、1~2mmの歯肉溝が徐々に深くなっていき、歯周ポケットを形成してしまうのですこの歯周ポケットが深くなればなるほど、歯周病が重度ということになります。

歯周ポケット内には酸素が少なく、酸素を嫌う偏性嫌気性細菌が過ごしやすい環境になっています。
前述したポルフィネモナス・ジンジバリスという菌は、この酸素を嫌う偏性嫌気性細菌です。こうした細菌は歯周ポケット内にある黒い歯石(歯肉縁下歯石)を除去しないと減らないうえ、歯周炎も進行していきます。


黒い歯石には歯科医院での対処とセルフケアが不可欠


黒い歯石はどのような対処をすればよいのでしょうか。

付着および沈着してしまった黒い歯石は、自分で取り除くことはできません。特に歯周ポケットは歯ブラシなどが届きにくいため、清掃効果が及ばずプラークが蓄積しやすい状態となります。付着している歯石が気になるというかたは、かかりつけの歯科医院に相談しましょう。

歯科医院では、まず歯肉縁上歯石を取り除くスケーリングから始まります。

その後、歯肉や歯周ポケットの状態を見て専用の器具を使い、歯肉縁下歯石を取り除いていくという流れです。適切な歯周治療を行うことによって歯肉溝の回復に繋がりますので、定期的な通院が推奨されます。

さらに歯肉縁下歯石を除去した後は、自宅でのセルフケアがとても大切になります。歯科医院で指導された磨き方を継続し、歯周病の進行を予防しましょう。

定期的に検診を受けることで歯周病の進行具合がわかるほか、定期的なスケーリングにより菌の停滞を防ぐことができます。また、歯科衛生士からは歯肉の状態や個人の癖に合わせたブラッシングの指導を受けることができます。自宅でのセルフケアに活用しましょう。

白い歯石は唾液由来で、黒い歯石は血液由来であること、そしてこの黒い歯石は歯周病と深い関係があることなどを踏まえ、自宅でのブラッシングや定期的な検診を心がけましょう。目に見えない場所だからこそしっかりと対処し、歯周病の進行を予防してください。

監修者

歯科衛生士
田仲真菜美
田仲真菜美 氏の近影

たなか まなみ。歯科衛生士。平成27年4月歯科衛生士資格を取得し、歯科医院にて勤務。歯科領域のコラム執筆などにも従事。

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