お口と健康
2019.04.15

どうして歯ぐきが痩せてしまうの? その原因や対処法を解説

ふと鏡で口内を見たときに、「昔と比べて歯ぐきが痩せた気がする」と感じたことはありませんか。
歯ぐきが痩せると知覚過敏の症状が出るなど、お口の健康に悪い影響があります。

その原因は加齢や歯周病などさまざま。原因を特定して対策をする必要があるのです。
今回は歯ぐきが痩せる原因やそれによって起こる弊害、また、歯ぐきを下げないためにすぐにできる対処法について解説していきます。



歯ぐきが痩せることによって起きる弊害


歯ぐきが痩せる、または下がることを「歯肉退縮」といいます。歯肉退縮が進むと歯根部(歯の根元の部分)の露出が進み、以下のような弊害も生じます。

歯がしみる


歯ぐきが痩せると、冷たいものを飲んだときに歯がしみるといった知覚過敏の症状が生じてしまいます。
これは、今まで歯ぐきで覆われていた根元の部分が露出するためです。また、歯磨きの際に根元部分を磨くと、その刺激によってしみると感じることもあるでしょう。

歯が長くなったように見える


歯ぐきが痩せると位置が下るため、歯が伸びたように見えてしまいます。
歯の根元が露出すると、どうしても見た目が悪くなってしまいます。そのため、歯を出して笑うことに抵抗を感じる方が少なくありません。

虫歯になりやすくなる


歯の根元の部分は、「象牙質」という組織で覆われています。歯の表面を覆っている「エナメル質」という組織は骨よりも硬いため、虫歯の原因であるプラーク歯垢)が残っていても、すぐに虫歯になることはありません。
しかし象牙質はエナメル質より柔らかいため、しっかり磨けていなければ虫歯になりやすくなります。

歯ぐきが痩せてしまう原因とは?


それでは、歯ぐきが痩せてしまう原因にはどのようなものがあるのでしょうか。

加齢によるもの


60%がコラーゲンで構成されている歯ぐきは、加齢とともに下がります。
年を重ねると肌のハリがなくなるのと同じように、歯ぐきも加齢とともに少しずつ痩せてハリがなくなってしまいます。

歯周病によるもの


歯周病は、歯ぐきを痩せさせる原因の一つ。歯周病菌によって歯の周りの組織が破壊されていくと、歯ぐきの位置も下がっていきます。

強いブラッシング、間違ったブラッシング


歯磨きの仕方が間違っていると、歯ぐきが痩せてしまう原因となります。正しいブラッシング圧は150~200g といわれていますが、これより強い力でゴシゴシと強い力で磨くと歯ぐきを下げてしまう場合があります。

また、しっかり磨けていなければ、歯と歯ぐきの境目の歯周ポケット内で歯周病菌が繁殖してしまいます。歯周病を悪化させる原因となるため、歯ぐきが痩せてしまうのです。

歯ぎしり、噛み合わせのズレ


歯ぎしりをしていたり噛み合わせが悪かったりすると、歯に強い負担がかかることに。
徐々に歯を支えている周りの骨(歯槽骨)を破壊して量が少なくなるため、それに合わせて歯ぐきの位置も下がってしまうのです。

歯ぐきが痩せてしまったときの対処法


歯ぐきが痩せてしまった場合、どのように対処したらよいのでしょうか。

実のところ、歯ぐきは一度下がってしまうと、もとの正常な状態に戻すのは難しいです。しかし、対処法が全くないわけではありません。
軽度の歯ぐきの痩せが歯周病によるものであれば、まずは歯科医院でのクリーニングが効果的。
普段の歯磨きでは磨けない部分に溜まったプラークや歯石を落としてもらうことで、歯ぐきの炎症が治まっていきます。その後、徐々に歯ぐきの位置は回復していくはずです。

ただし、ある程度症状の進んだ歯周病を治療した場合は歯ぐきが引き締まり、逆に歯ぐきの位置がさらに下がってしまうことがあります。
歯肉退縮が噛み合わせの悪さからきている場合は、噛み合わせを正しい位置への調整が必要です。

歯ぐきが大きく退縮してしまっているならば、歯科医院で外科手術を受ける治療法も考えられます。
代表的な手術は、上あごの組織の一部を歯肉が下がってしまったところに移植する「遊離歯肉移植方法」。適応にならない場合もありますので、必ず歯科医師とよく相談したうえで最善の処置を決めましょう。

健康な歯ぐきを保つために今からできること



もっともよいのは健康な状態の歯ぐきを保ち、歯ぐきを痩せさせないことです。
そのためには、日々の努力が欠かせません。普段のケアをていねいに行っていきましょう。

ていねいに歯を磨く


とりわけ、夜寝る前はしっかりと1本ずつていねいに歯を磨きましょう。

歯間部を清掃する


歯周病は歯と歯の間から進んでいきます。歯の歯の間は歯ブラシで汚れを落とすことができません。デンタルフロス歯間ブラシで、歯間部を毎晩清掃しましょう。

正しいブラッシング圧を保つ


前述の通り、正しいとされるブラッシング圧は150~200gです。一度、スケールでどれくらいの圧力か確かめてみましょう。

栄養のある食事を摂る


歯ぐきを健康に保つには、栄養あるバランスの取れた食事も欠かせません。ビタミンやミネラルが含んだ食材を積極的に摂るようにしましょう。

定期健診を受ける


どんなにていねいに磨いていても、磨き残しはあるもの。3カ月に一度、少なくとも半年に一度は歯科医院で口内を検査・クリーニングしてもらいましょう。


正しいオーラルケアを日々の生活に取り入れて、健康で若々しい口元を保つようにしてください。


<参考・参照元>
知覚過敏|歯と口の健康研究室|ライオン歯科衛生研究所
歯茎が下がる原因とは!?

監修者

歯科衛生士
棚橋沙紗
棚橋沙紗 氏の近影

たなはし さあしゃ。歯科衛生士。平成22年3月歯科衛生士資格を取得し、歯科医院にて勤務。歯科領域のコラム執筆などにも従事。

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