お口と健康
2018.08.27

虫歯・歯周病はいつからあった?太古の昔から人類を悩ます口内の病気

目次
  1. 意外と長い!? 人類と虫歯・歯周病との付き合い
    1. 意外に虫歯が多かった縄文人
    2. ネアンデルタール人や古代エジプト王も重度の歯周病に!
  2. 人類は約10万年も前から歯を治療していた?
歯科治療やオーラルケア用品が充実した現在でも、多くの人を悩ませ続けている虫歯歯周病。私たちは当たり前に治療をしています。
しかし、そのようにお口の環境は治療して整えるもの、という認識を持つようになったのはいつからなのでしょうか。
ここで少し口内環境と人類の歴史をさかのぼってみましょう。


意外と長い!? 人類と虫歯・歯周病との付き合い


人類と虫歯・歯周病との付き合いは非常に古く、南アフリカで発見された200万年以上前の猿人(アウストラロピテクス・アフリカヌス)の骨には、すでにその痕跡が見つかっています。
虫歯や歯周病というと現代病のように思われがちですが、少なくとも200万年以上にわたる長い付き合いなのです。

意外に虫歯が多かった縄文人

虫歯は、口内の虫歯菌が代謝する酸に歯のエナメル質象牙質が溶かされることで起こります。
虫歯菌は糖質類を栄養源として口の中で増殖するため、糖分の多い食生活を送るようになった近代以降、虫歯の罹患率が飛躍的に上昇しました。

とはいえ、近代以前にも人類は虫歯に悩まされてきました。
ヒト(ホモ・サピエンス)以前では、たとえばザンビアで発見された約30万年前のカブエ人の化石人骨に、すでに虫歯がありました。奥歯だけではなく、犬歯や切歯などの前歯にも虫歯があったのです。

日本でも、古くは縄文時代の遺跡から出土した頭骨から、虫歯の痕跡が見つかっています。植物性食糧への依存度が大きかった地域ほど、虫歯の罹患率も高くなり、縄文時代を通じた全体の比率は、約10%でした。これは、同じ新石器時代に暮らしていた7600年前のアメリカ先住民の約20倍。縄文人が動物の肉だけでなく、クリなどの堅果類やイモなどの根茎類といった糖質を含む豊かな食生活を送っていたからだろうと考えられています。

さらに、農耕が普及しコメなどの穀物が食べられるようになる弥生時代になると、虫歯罹患率は跳ね上がり、約20%に達します。弥生時代は、現代に次ぐ高水準の虫歯罹患率となっており、農耕文化の浸透がそのおもな要因であったようです。

ネアンデルタール人や古代エジプト王も重度の歯周病に!



一方、歯周病は、歯周病菌の活動によって、歯を支えている歯ぐきや骨(歯槽骨)が壊されていく病気です。
初期には、歯と歯ぐきの境目に歯垢が蓄積することで、歯ぐきが炎症を起こして赤くなったり、腫れたりします。これが進行すると、歯槽骨まで溶け出して、最終的には歯が抜け落ちてしまいます。

約30万年前の旧人(ローデシア人)や、旧石器時代の早期ネアンデルタール人の遺骨のなかにも、虫歯を伴った重度の歯周病の痕跡が認められます。フランスのラ・シャペローサン遺跡で発見された約6万年前の化石人骨は、50~60歳と推定されましたが、ひどい歯周病のため、生前にほとんどの歯が抜け落ちていたようです。

時代が下り、古代エジプト時代になると、歯周病はかなり一般的な病気となったようです。紀元前13世紀のメルエンプタハ王のミイラからは、歯槽骨が溶けてなくなり、歯が抜け落ちたり、グラグラになったりしている様子が窺えます。きっと長い間、痛みや不快感に悩まされ続けていたことでしょう。

古代人の歯周病の状態を比較すると、身分の高い人の方が病状が重かったことがわかります。
食習慣が歯の健康におよぼす影響は非常に大きく、食べ物に恵まれていた人ほど、歯周病にかかる可能性は高かったようです。

人類は約10万年も前から歯を治療していた?


治療をすることが当たり前となっている、虫歯や歯周病。では太古の人々も何らかの治療をしていたのでしょうか。

古代人の化石の歯に縦の溝が刻まれていることがあります。これは楊枝のようなものを使っていた痕跡といわれ、世界各地で見つかっています。食べかすを掻き出すだけでなく、痛いところを、堅く尖ったもので強くこすったのでしょう。

2013年、スペインの研究者が5万~15万年前のネアンデルタール人の歯を調べ、「歯肉炎の痛みを和らげるために、ある種の植物の楊枝を使っていた」という論文を発表。これは古代人の歯の治療だと話題になりました。

ヒト(ホモ・サピエンス)の出現以前から、人類は歯の痛みに悩まされてきたのでしょう。
現在、その対策や治療法は多岐に渡っています。もしも、虫歯や歯周病が発症してしまったら……放っておくことはせずに、適切な処置を受けるようにしましょう。
もちろん予防には、日常のオーラルケアを忘れずに行うことが大切です。


<参考文献>
『ものと人間の文化史 177 歯』大野粛英(法政大学出版局)
『歯の豆辞典―歯科医からみた歯の人類学』山田博之(丸善プラネット)
OralFirst
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