歯周ポケットの正しい磨き方を覚えよう
磨き残しをできるだけなくすためには、お口の中の汚れやすい場所を把握し、そこを磨くコツを知っておく必要があるのです。
今回は、特に歯と歯ぐきの境目にポイントを絞って、正しい磨き方を解説していきます。
歯と歯ぐきの境目に汚れが溜まりやすい理由
私たちのお口の中には、常に300~400種類もの細菌が存在しています。そして、それらの細菌は互いに強く結びついて形成するコロニーが「プラーク(歯垢)」の正体です。このプラークは特に歯磨きがしにくい、以下の部分に溜まりやすいと言われています。
- 歯と歯の間
- 奥歯の溝の部分
- 歯と歯ぐきの境目
この3つを、「お口の中の三大不潔域」といいます。
この三大不潔域を見ると、プラークは隙間に溜まりやすいことが分かります。なぜ、歯や歯ぐきの境目に汚れは溜まるのでしょうか。
それは歯と歯ぐきの境目や溝に、たとえ健康な歯ぐきであっても2~3mmほどの隙間があるから。この隙間を「歯周ポケット」と呼びます。
歯周病菌は「嫌気性菌」といって空気が嫌いな菌のため、空気が少ないポケット内部を好みます。また、ポケット内部は歯磨きが届きにくいことから、歯周病菌が繁殖しやすいのです。
歯周ポケットの汚れを放置するのは危険
歯周ポケット内の汚れは、放置をすれば歯周病の発症へとつながります。
歯周病菌は繁殖する際に毒素を出し、歯ぐきに炎症を起こします。これが“歯肉炎”の状態です。歯肉炎の段階でしっかり歯磨きして汚れを落とせば、炎症は治まり、歯ぐきの状態は回復していくでしょう。
しかし歯周ポケット内の汚れが放置されると、炎症が徐々に歯周組織に及びます。
やがて歯を支える歯槽骨やセメント質、歯根膜などが破壊されていき、歯周病が進行していくのです。
歯周病が進行すると、最終的には歯が抜け落ちてしまいます。抜歯の原因第一位は、この歯周病です。
歯と歯ぐきの境目(歯周ポケット)の汚れの放置は、歯を失うリスクを非情に高くするといえます。
虫歯の放置は危険。治せるうちに対処を!
歯の根元を磨く時のポイント
では、どのように歯の根元の部分、とくにポケットの中を磨いたらよいのでしょうか。
具体的な5つのポイントをご紹介します。
1. 歯ブラシはえんぴつ持ちをする
まず、歯ブラシの持ち方です。基本的な持ち方は2つあります。
握って持つ持ち方(バームグリップ)と鉛筆を持つような持ち方(ペングリップ)があり、磨く場所によって持ちやすい方法をとるのがいいでしょう。
しかし、あまりにもしっかりと握った状態で歯を磨くと、余計な力が入ってしまいます。
あまり力が入らないように、毛先が広がらない程度の力加減で磨くのが良いです。どうしても、力が入ってしまうという人はペングリップがオススメです。
2. 歯ブラシを歯に対して45度の角度で当てる
歯磨きは、ただ歯の表面を磨くわけではありません。歯周病予防のためには、歯周ポケットの中を磨くように意識することが大切です。
歯と歯肉の境目に対して45度の角度に当てて、細かく前後に動かしてあげると効果的です。
3. 小刻みに動かす
歯ブラシを大きく動かしてしまうと、歯周ポケットの中まで磨くことはできません。1本ずつ、丁寧に磨き残しのないように動かしましょう。
磨く順番などを決めておくと、磨き残しがグッと減りますよ。
4. 優しい力で磨く
強い力で磨いたほうが、汚れが落ちるように感じるかもしれませんが、それは大きな間違いです。
強い力で磨くと歯ブラシの毛先が寝てしまいます。すると歯は歯周ポケットに毛先が十分届かなくなるため、汚れが落とせなくなるのです。
理想のブラッシング圧は150~200g。一度ご自宅にあるスケールで、ご自身がどれほどの力で磨いているか確認することをオススメします。
歯ブラシの交換時期の目安は1カ月
歯ブラシには寿命があります。毎日使っていくうちに毛先は消耗しますし、徐々に開いていきます。
寿命の過ぎた歯ブラシでいつもと同じように磨いても、汚れの除去効率は悪くなるばかり。歯ブラシは1カ月を目安に交換するようにしましょう。
月初めに交換するなど、日にちを決めておくと安心です。
就寝前は歯間部のお手入れも忘れずに
寝ている間は唾液があまり分泌されず、お口の中が乾燥します。お口の中の細菌が、1日のうちでもっとも増えてしまうのです。
そのため、寝る前の歯磨きはとても重要。丁寧に、しっかり時間をかけて磨くようにしましょう。
加えて、歯と歯の間も磨くことを忘れずに。なぜなら、歯間部の汚れも歯周病を悪化させる要因になるからです。
しかし、歯間部の汚れは歯ブラシだけでは落とすことが難しいです。デンタルフロスや歯間ブラシも活用して、汚れを落とすことをオススメします。
定期検診を受けましょう
歯周ポケット内のプラークを放置すると、プラークは徐々に歯石へと変わっていきます。そうなった場合、歯ブラシで落とすことが難しいので、歯科医院で除去してもらうのが一般的です。
また、今回ご紹介したポイントをおさえた上でどれだけ一所懸命に磨いたとしても、磨き残しは出てしまいます。
歯周病と診断された方以外の人も、3カ月に1度、少なくとも半年に1度は歯科医院で定期健診を受け、口内の汚れをクリーニングしてもらうことをオススメします。
<参考・参照元>
歯周病ケアを意識した歯のみがき方|歯周病について|ライオン
口腔ケア1(三和中央病院診療部歯科)
虫歯になりやすい「三大不潔域」|藤沢の歯医者 菅井歯科医院 | インプラント・歯周病治療
どうして歯周病になるの? - つゆくさ歯科医院(名古屋市緑区の歯医者)
歯周病のこと|わかもと製薬のオーラルケア情報室
歯を失う原因|8020推進財団
歯ブラシでのみがき方基本|歯と口の健康研究室|ライオン歯科衛生研究所