糖尿病と歯周病の深い関係、お口の環境が病気によって悪化する?
放っておくと危険な歯周病
まず、歯周病とはどんな病気なのか、おさらいしてみましょう。
健康な歯ぐきから出血することはありません。歯磨きやフロッシングのときに血が出るようなら、歯周疾患になりかけているのかもしれません。歯肉が腫れ、出血しやすくなるのは、歯肉炎の症状です。この段階であれば、歯垢の除去により腫れはおさまり、出血も止まります。
歯垢を取り除かないと感染が広がり、歯周病へと悪化します。さらに治療をしないで放っておくと、歯肉の付着が断絶され、歯周ポケットができてしまいます。
歯周ポケットが深くなると、治療はさらに困難になります。歯磨きやフロッシングでは、歯周ポケットの奥の歯垢は取り除けません。残った歯垢の中の細菌は毒素を流し続け、それが歯を支える土台である歯周組織を破壊していきます。
口臭がしたり、歯周ポケットができたり、歯ぐきが赤く腫れたり、出血しやすくなったら、歯周病が進行している証拠です。ここまで進行すると、歯の土台になる歯槽骨が溶け出し、歯がグラグラし、かみ合わせも変わってきます。最終的には、たとえ健康な歯ぐきであってもポロリと抜け落ちしてしまうこともあるのです。
毎日きちんと歯磨き、フロッシングをすれば、歯周病を予防し、健康な状態を維持することができるでしょう。
糖尿病が歯周病を引き起こす?
一方、糖尿病は、身体がグルコース(糖)を正常に処理してエネルギーに換えることができなくなる病気で、口腔内を含め、身体全体に大きな影響を及ぼします。
糖尿病になると、歯周病にかかりやすくなるという報告もあります。糖尿病は全身への酸素や栄養補給の低下や、有害物質を体内から排出するペースの低下といった症状を引き起こします。糖尿病患者が血糖値を監視しなければならないのはそのためです。血糖値が上がると唾液に含まれる糖分も増え、それが口腔内の細菌の養分になって、歯周炎になりやすい環境がつくり出されてしまうのです。
さらに糖尿病によって免疫力や治癒能力が低下すると、歯周炎が本格的な歯周病へと進んでしまいます。その結果、より深刻な合併症に苦しむこともあります。また、歯周病はインシュリン抵抗性を増大させ、糖尿病を抑えようとする身体の能力を低下させてしまいます。
世界的に増加する糖尿病患者
1985年には糖尿病患者は全世界でわずか3,000万人でしたが、世界保健機構(WHO)によれば、そのわずか10年後には1億3,500万人まで増大しました。現在では1億7,700万人を超え、しかもその3分の1から半数の人は診断を受けていません。
また、糖尿病予備軍の増加も懸念されています。糖尿病予備軍とは、血糖値が通常よりは高いが、まだ糖尿病と診断されるまでに至っていない状態のことです。全世界で3億5,000万人以上の人が糖尿病予備軍だと考えられています。最近の調査によれば、糖尿病予備軍であっても、長期の障害、特に心臓および循環器系への障害がすでに発生しているケースがあることがわかっています。
糖尿病がお口の健康に及ぼす影響
64%近くの糖尿病患者が、すでにある程度進行した歯周病にかかっていると言われています。
糖尿病は病気の治癒を遅らせ、細菌に感染する危険性を高めます。したがって、糖尿病患者、特に血糖値を管理していない方は、合併症の危険性が高くなります。
糖尿病または糖尿病予備軍の方は、毎日、お口のお手入れをする際に次の点に注意しましょう。
- 1日少なくとも2回、お口全体をくまなく歯磨きし、毎日フロッシングしましょう。
- 喫煙者の方はたばこを止めましょう。糖尿病で喫煙を続けると、それだけ歯周病になる危険性が高まります。
- 6カ月ごとに歯科医の定期診断を受けましょう。その際、糖尿病であることを必ず歯科医に伝えましょう。
- 歯ぐきに痛みを感じたり、ドライマウス(口腔乾燥症)になったり、歯ぐきの一部が白くなっていたり、口の中で嫌な味がすることに気づいたら、すぐに歯科医の診察を受けましょう。
- 正常な血糖値を維持することは、身体全体の健康だけでなく、お口の健康のためにも重要です。
幸いなことに、すべての糖尿病患者の方がこのような悪循環に陥るわけではありません。健全な血糖値を維持するために治療プランをしっかりと守り、定期的に歯磨きとフロッシングをすれば、歯周病になる危険性を減らすことが可能です。オーラルケアを欠かさないようにしましょう。
<参考・参照元>
お口の健康と病気/PHILIPS